晴れのち曇り ときどき溺愛
 ボタンを引き千切るくらいなら少しの恥を捨ててお願いした方がいい。それにチャックを降ろして貰うとかではなく、一番上のボタンを外して貰うだけ。女の方からお願いするのどうかとは思うけど、それでも借り物のドレスに傷をつけるよりはいいと思った。


 寝室のドアを開けて出てきた私がまだ着替えもしてない状況で言った言葉に下坂さんは吃驚はしたようだったけど、スッと立ち上がると私の後ろに回りスルリとボタンを外してくれたのだった。


「これでいいと思う」


 それだけ言うと、また何事もなかったかのようにソファに座ったのだった。


「ありがとうございます」


 寝室に飛び込むように入ると、ドレスを脱ぎ、さすがに部屋着と言うわけにもいかないから、ちょっとだけ可愛らしいワンピースを着ると、鏡の前で髪を解く。ピンで留めていたので、それも全部外すと髪はぼさぼさになってしまった。

 ゴムで纏めて、ヘアクリップで留めると普段の私とは違う派手な化粧が妙に浮いていた。パーティ用だから仕方ないといえばそうだけど、このままの顔を見せるのは恥ずかしい。


 コットンで化粧水をつけてから派手な色だけを軽く落とした。顔を洗えない状況ではこれが最善だと思う。リビングに行くまでの時間は多分、五分くらいだったと思う。
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