晴れのち曇り ときどき溺愛
「コーヒー淹れますね。ブラックでいいですか?それとトーストくらいなら出来ます。今は冷蔵庫の中はあんまり物が入ってなくてそれ以外は出来ませんが、インスタントのスープならありますよ」


 寝室から出て、リビングの端にあるキッチンでコーヒーのセットをすると、下坂さんの視線が私に注がれていた。下坂さんはスーツの上着を脱ぎ、ネクタイを外して、袖口のカフスも外し、まくり上げていた。

 
 私が着替えている間に、下坂さんもそれなりに少しは服を緩めたのだろう。テーブルの上には外されたネクタイと時計が置かれていた。


「普段はそんな恰好をしているの?」

「こんなワンピースかジーンズとか。楽な格好をいつもはしています。変ですか?」

「可愛いよ。いつもはスーツしか見てないから新鮮で、それとコーヒーだけ貰ったら帰るからトーストとか気にしないでいいよ」

「はい」


 テレビの音だけが響く部屋に香ばしいコーヒーの香りとコポコポという音が響いている。私の部屋に下坂さんがいてソファに座っている。その光景が現実とは思えなかった。


「あの、ドレスと靴はいつお返ししたらいいですか?」

「返さなくていいよ」

「でも、お姉さんのでしょ。勝手にそんなことは出来ません」

「そのドレスは姉のじゃない」

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