晴れのち曇り ときどき溺愛
 日曜は私と下坂さんもゆっくりとした時間を過ごした。コーヒーを飲んだら帰るという下坂さんだったが仕事の話をしていて、気付いたら昼を回っていた。さすがにテレビの正午を知らせるニュースを見てハッと我に返ったようだった。


「もうこんな時間になってしまった」

「いえ。私が迷惑を掛けてしまったから…でも、そのお蔭で新しいプロジェクトの話も出来たし、これからどう自分がしていけばいいのかもわかったのでよかったです。ありがとうございました」

「じゃ、また明日」


 パーティの夜も日曜の朝も私には特別だったし、下坂さんに近付けた気がしたけど現実に戻ると距離は縮まってなかった。


「おはようございます」


 最後の営業室に入ってきたのは絵里菜さんだった。土曜日の煌びやかなドレス姿とは違うけど、それでも眩さは健在で私にも眩い微笑みを向ける。


「梨佳さん。おはようございます。あの後、どうされました?そのまま帰りましたか?」


 どう答えたら一番いいのか迷う。一緒に食事はいい?一緒にタクシーはいい?


「ちょっと食事してタクシーで送ったよ」


 そう答えたのは私ではなく下坂さんだった。
< 259 / 361 >

この作品をシェア

pagetop