晴れのち曇り ときどき溺愛
 さっきまでは下坂さんしか居なかったのに、今は見城さんだけ。見城さんは会議が終わってすぐに出掛け、もう戻ってきたのだろう。机の上にはパソコンが立ち上げられ、手元には今朝から渡された資料がある。室長に言われた分の割り当てを見城さんはもう始めていた。

「お疲れさまです。お一人ですか?コーヒーでも飲まれますか?飲まれるなら淹れますよ。進藤さんみたいには上手に入れられませんが」


「ああ。お疲れ。コーヒーは後から貰う。それよりも資料は全部あったか?」

「資料を順番に揃えましたが、これからどうしますか?」

「とりあえず諸住さんもプロジェクトの割当ての分に取り掛かって貰えるかな?調べながらしないといけない部分もあるので無理をしないでいいから間違えないように。それと困ったことがあるならすぐに言って。進捗状況の管理も今回は俺が任されている」

「はい」

「それとさっき連絡があり、室長は親会社の方から呼ばれてる。夕方まで戻らないと思うから、仕事が終わったら帰っていいよ。室長は父親から呼ばれたんだから逃げられないしね。そろそろかもしれないな」

「何がですか?」

「室長も三十一歳だし身を固めろと言われ続けている。今の親会社の重役どもは結婚して家庭を持ってないと一人前でないとか言うしな。俺たちは自分の意思で恋愛も結婚も出来るが、室長はある程度制限される。普通なら午前中で帰ってくるはずなのに、帰社が直帰の可能性ありと書かれたら、そう思うのが普通だろ」
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