晴れのち曇り ときどき溺愛
 見城さんの説明を聞いていた下坂さんは資料を見ながら頷いている。ここまで出来ていたら上司としては満足するだろう。

「新規プロジェクトの見城の割り当て部分は思ったよりも進んでいる。このまま頑張って欲しい。それと私の方も順調に進んでいる。これに関しては次回の会議の時に連絡する。次は斉藤。何かあるか?」


 遠くで斉藤さんの声を聞きながら、資料に書き込みをしていく。斉藤さんも見城さんと同じように順調に仕事を進めている。そして、一番驚いたのは…絵里菜さんだった。絵里菜さんはこの課に来て間もない。そんな中で井上さんの指導を受けながらの仕事だから私と同じ立場だった。でも、私とは違った。


「お疲れ様です。先日、井上さんと一緒に作成したシステムが軌道に乗りそうです。一緒に訪問した先で新しいシステムの依頼を受けました。前回に導入したものを別の部署にもと話が出ました」

「進藤さんと一緒にシステム導入に行った先での追加注文です。その件に関しては私と進藤さんだけでは大変なのにで室長にも協力を頂きたい」

「その件は後から個別に相談に乗ります。では、次は諸住さん」


 絵里菜さんの報告に井上さんが補足して発表が終わると私の順番だった。でも、私は絵里菜さんのように目に見える報告はなかった。昨日の夜、残業して少しは進んだけど、それもまだ実績と言えるほどではなかった。
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