晴れのち曇り ときどき溺愛
 今日の夜は琉生と約束をしている。色々と話したいこともあった。火曜日から飲むとは思えないけどきっと近場の居酒屋だろう。でも、下坂さんの言っているのが仕事のことなら琉生の約束は後日にして貰わないといけない。仕事だと言ったらきっと琉生は分かってくれるだろう。


「前の部署の同僚と会うことになってます」


 下坂さんは少し何か考えているようだったけど、フッと顔を緩めた。その表情からは何も読み取れない。

「そうか」

「プロジェクトの件ですか?」

「いや、それならまた今度でいい」

「資料室に行ってきます」

「ああ」


 そう言うと下坂さんはまた自分のパソコンに視線を戻し、私の方は一切見なかった。営業室を出て資料室に向かって歩き出した私は下坂さんの事ばかり考えていた。下坂さんのさっきの様子から朝のことは何も覚えてないのだろう。あのいきなりのキスもきっと寝とぼけていただけなのだろう。


「なんかツラいなぁ。なんで恋なんかしたんだろ」


 資料室に入って一人になると私は下坂さんの事を思い目蓋が熱くなるのを感じた。好きにならなければよかったけど私は好きになってしまった。


 
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