晴れのち曇り ときどき溺愛
 昼休み以外は資料室で時間を過ごした。


 下坂さんの傍に居ると抑え込んでいた恋心が溢れだすから困る。ここは埃っぽい資料室だけど、殆ど人は来ないしパソコンもあるし、デスクもある。資料を出してきてはパソコンに打ち込み、出来た資料から営業室の自分のパソコンにファイルを送る。そんなことを何度も繰り返していると、ガラッとドアが開き、中に入ってきたのは見城さんだった。


「ここにいたのか?室長が諸住さんは資料室から戻って来ないって言ってた」

「資料を探しながら仕事をしてました。移動距離が勿体なくて」

「気持ちは分かるが、俺も室長もいるのだから、もう少し頼った方がいい。チームで仕事はしているだろ。それなのに諸住さんは一人で抱え込んでいる。出来ているところまで見せてくれる?」

「はい。これです」


 見城さんは空いている椅子に座ると私が手渡した資料を捲りだした。そして、こめかみに人差し指を当て考え込んでいる。頭の中のコンピューターが凄い勢いで演算しているのだろう。資料を捲りながらこめかみを人差し指でトントンと軽く叩いている。


「この資料から出来上がったものは営業室のパソコンに送った?」

「はい。出来た分は送りましたが、まだ私の割り当ての分の資料が全部揃ってないです」

「始まったばかりで資料が全部揃う方がおかしいだろ。諸住さんは真面目過ぎ。室長も言ったけどもう少し俺や室長に頼るべきだと思う」

「でも、私の割り当てですし」
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