晴れのち曇り ときどき溺愛
 席を代わって奥に座ると琉生が私に気を使ってくれているのが分かった。身体の大きな琉生の横に座ると私は反対側から見えなくなる。琉生はこういうところに気が付く。


「先に飲み物。あ、俺、ビールで、後は梨佳に任せる」

「何でもいいの?」

「梨佳の食べたいものでいいよ。どうせ俺。好き嫌いないし」

「分かった。枝豆とサラダを先に頼んでから決める。それと私もビール」


 注文をしてからすぐにビールと枝豆は届けられた。金欠だと言っていたから気を使おうと思ったけど琉生の胃の具合からして足りなくなるのは困る。そう思うとそれなりの量になっていた。


「乾杯」


 ジョッキに口をつけると冷たさを唇に感じた。そして、ゆっくりと喉を通るビールの冷たさを美味しいと思った。仕事の後のビールは格段に美味しい。でも、今日は飲みたかったのだと口を付けた瞬間に気付いた。喉を通る度に本当に美味しいと思う。


「美味しい」

「だな。俺も美味いと思う。仕事を終ってのビールって最高だよな」


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