晴れのち曇り ときどき溺愛
「琉生のこと。きちんと考えてみる。だから時間を少しくれる?」


 すぐに琉生の告白に答えられなかったのは琉生のことを本当に大事に思っているからだった。琉生は同期というだけでなく誰よりも親しい男友達。そんな琉生のことを「好き」とか「嫌い」とかの簡単な言葉では割り切れなかった。自分の中の気持ちを整理して、それから琉生のことを真剣に考えてみようと思う。琉生の思いに答えられるか分からないけど、それでも私は真剣に琉生に向き合いたいと思った。


「もちろん。俺は梨佳がどんな決断をしてもいい。梨佳が自分が一番幸せになることだけを考えてくれればそれでいい」

「ありがとう。琉生」

「ああ」


 駅にはかなり遅くの時間になっているのにたくさんの人が溢れている。その半数どころか八割方が、私と琉生のように飲んできているのかもしれない。お酒に酔ってテンションが上がったままで話続けているオジサンたちがたくさんいた。


「マンションまで送ってもいいけど、梨佳を襲いそうだから駅まででいい?」

「ここでいいよ。琉生も仕事だから」

「ホームまで送る」


 駅のホームに当たると同時に私が乗る電車がホームに入ってきた。琉生の乗る電車はまだ少し時間がある。


「じゃ、またね」


 私が電車に乗り込むと、電車のドアが閉まる瞬間、私にだけ聞こえる声と微笑みを私に向けた。

「梨佳が一番幸せになれるのが俺は一番嬉しい」

 閉まったドアの中で私は顔が熱くなるのを止めることが出来なかった。
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