晴れのち曇り ときどき溺愛
　下坂さんは自分の手を止めて私を見ていたけど、私は失礼ない程度に視線逸らす。下坂さんの綺麗な顔を見ていたらまた自分の気持ちが混乱してしまいそうで怖かった。一緒に過ごしてしまった夜を忘れたくても忘れられそうもなかった。

　私は昨日集めた資料から大事なところを抜き出しながら仕事を進めているとパソコンの画面を凝視しすぎたせいか、目の奥が痛くなる。

　下坂さんと私の席の間には二つ分の机の空間があって、一緒の部屋にいるのに一人でいるように感じられた。パチパチとパソコンのキーボードが音を立てているのが妙に響く。誰か早く出社してくれないのかと思うけど、今日に限ってみんなギリギリ。下坂さんは涼しい顔で仕事をし、私だけが焦る時間が続く。


「諸住さん。明日の金曜日の夕方、この新規プロジェクトのことで見城も交えて食事をしながら話をしたいと思うけどどうだろうか？本当は日中にどこかのタイミングで話し合いをしてもいいけど、どうも今週は忙しく見城と私の時間が合いそうもない。時間外だし、場所も社外の居酒屋かなんかになるから、強要は出来ないけど、時間を作って貰えたら助かる」


　静かに零した声はとっても優しかった。
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