晴れのち曇り ときどき溺愛
『悪いな。頼まれついでに近くの店で弁当を買ってきてくれたら助かる。今は仕事がどうしようもなく忙しく食事をする時間さえない。梨佳の分の弁当も買ってきたら俺が奢るぞ。冷蔵庫にビールは入っているからいらない』


 拳は会社を興し、自分だけの力でやってきている。会社の業績は徐々に伸びていて、今は私の会社とも取引をしていて、かなりの得意先になっていると聞いている。そんな忙しい中で琉生のことで話となると身構えてしまいそうだった。でも、私も拳に会いたいと思った。自分の中で定まらないし、自分一人で部屋にいたら色々なことを考えてしまって、また寝れなくなりそうだった。


 それなら拳に話を聞いて貰うのも悪くない。本当なら遥に話を聞いて貰いたかったけど、遥は琉生のことをいつも私に勧めるくらいだから、答えは決まっている。

 それに比べると拳は周りを見比べて考えを纏めるから自分の中でブレることはない。会社を辞めて新しく仕事を始める時も全く迷わなかったのだろうかと思うくらいにスパッと辞めた。

 それが拳の強さだった。

『途中でデリの店で美味しいものを買ってくる』

『助かる。ついでに甘いデザートもいい?』

『それも了解』

 この頃、会社の近くに出来たお洒落なデリを量り売りする店が出来ていて、少しずつ好きなものを選べるのでそこで買っていこうと思った。さっきのメールの感じだったら会社に籠りきりで食事も碌に取れてないような気がする。
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