晴れのち曇り ときどき溺愛
 前菜から始まったコース料理はどれも見た目が可愛らしく美味しかった。値段は普通の店で食べるよりも少し高いけど、それでも内容には満足だった。特に最後のコーヒーはとっても美味しかったし、一緒に出されたガトーショコラが甘さ控えめで添えられた生クリームの口どけの淡さが上品だった。


「全部美味しかった。前菜も食べるのが勿体ないほど綺麗だったし、メインの牛肉のデミグラスソース煮込みは口の中で溶けて消えたし…。最後のデザートもコーヒーも美味しかった」

「それならよかったです。お久しぶりですね。諸住さん」


 聞こえてきたのは穏やかな声だった。

 振り向くとそこには隆二さんがいた。この店は進藤さんの会社の系列だからここにいても可笑しくないけど、いきなりの登場には驚く。


「お兄様。邪魔しないでよ。それにどうして私と梨佳さんが来ているのが分かったの?」


「さっき、シェフの大谷と今度のメニューの仕入れの件で相談していたら絵里菜が友達と一緒に来ていると教えてくれたから見に来た」

「…大谷さんなら仕方ないかも。で、お兄様は何をしにきたの?挨拶だけならもういいでしょ。梨佳さんとの時間を邪魔しないで」

「可愛い妹はこうやって兄を邪険にするんですよ」


 進藤さんは本当に妹である絵里菜さんの事が可愛いのだと思う。

「邪険というよりは邪魔です」

「ね。可愛い妹でしょ。諸住さん。もう少し時間ありますか?近くにこの店の系列の店があり、そこで少しお酒でもどうですか?」
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