晴れのち曇り ときどき溺愛
「今回は絵里菜と一緒に市場調査の一環ですから、本当は要らないですが、きっと諸住さんは遠慮してしまうでしょ。ですので、千円だけいただきます。勿論、絵里菜からも一緒の値段を貰います」

「でも…」

「絵里菜だけ特別には出来ません」


 絵里菜さんは自分の財布から千円を取り出すと、テーブルの上に置いた。それを見て私が多く置くわけにもいかない。お財布から千円取り出して絵里菜さんの置いたテーブルの上に私も置いた。


「すみません。ご馳走になります」

「いいですよ。こちらこそまた新メニューが出来た時はお願います」

「はい。本当に美味しかったです。ありがとうございました」

「またお会いしましょう」


 進藤さんに挨拶をしてから絵里菜さんと一緒に店を出ると絵里菜さんはクスクス笑いだした。何が可笑しいのか分からないけど絵里菜さんは店を出た瞬間から笑い出した。

「どうしたの?何か可笑しかった?」

「いえ。お兄様が可笑しくて。さっきのピアノは春くんです。春くんがピアノを弾いていて動けない時に梨佳さんを口説くんですもの」

「あのピアノは室長なの?」

「春くんは趣味でピアノを弾くんです。海外に行ってるとばかり思いましたが、帰ってきてたんですね」

 下坂さんはお祖父さんのことで海外に行っているはずなのに日本に居る。そんなことを私は聞いてなかった。考えてみれば、私にいう必要はないけど、それでも同じ仕事をする同僚をして帰ってきていることくらいは知りたかった。
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