晴れのち曇り ときどき溺愛
「下坂春臣」

「え?」

「俺は下坂春臣(しもさかはるおみ)。進藤隆二の親友でこの間の見合いは身代わりだった。まさか、君も五条玲奈さんの身代わりだったとは思わなかった」


 私が玲奈の身代わりだったように彼も進藤さんの身代わりだった。お互いに身代わりでお見合いをしていたという漫画みたいなことが現実に起きている。胸元からシルバーのケースを取り出すと名刺を私の方に差し出す。その名刺に書かれた名前は初めて見るものだったけど、それでも勤めている会社は見覚えのある名前だった。私が身代わりでお見合いした相手は進藤商事株式会社の御曹司である『進藤隆二』。


 実際に私の目の前に現れたのは…。


『進藤商事株式会社 営業部 第一営業課 システム管理責任者 下坂春臣』

「進藤隆二は俺の親友で上司。隆二にはずっと付き合っている彼女がいるからとお見合いの代理を俺に依頼した。そんな見合いだったけど、俺は君のことが気になっていた。君の会社に行き、ロビーを通る本物の五条玲奈さんを見て、君も身代わりでのお見合いだってわかった」

「それはわかったけど、それと梨佳に何の関係がある?梨佳も五条の代わりにお見合いをしたとはいえ、既にお互いの間で終わっていることなんだろ」


 
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