晴れのち曇り ときどき溺愛
 色々と大変だったと思う。海外ではお祖父さんにお母さんと一緒に付き添っていながら、空き時間には仕事もしていた。昨日、帰国したばかりで、疲れて頭のネジが緩んだのかもしれない。

「困ります」

「だと思うよ。俺も紳士的に接していこうとは思っていたけど、梨佳は思った以上に頑固そうだし。でも、一応両思いなのだから、結果は決まっている」

 さらっと『梨佳』って名前で呼ばれた…。

「私の意思はどうなるんですか?下坂さんのことを好きとか言ってない」

「俺に惚れろ。そうしたら問題ない。今での俺のことを嫌ってないだろ。嫌っていたら一緒に食事になんか来ない」

「嫌いではないですが、好きでもないです」

「さ、仕事だ。頑張ろうな。お互いに」

 話は噛み合わないまま、営業室に入ると私と下坂さんを除く全員が戻ってきていた。井上さんと絵里菜さんは打ち合わせをしていて、斉藤さんはパソコンで書類作成。見城さんはコピー機の前で印刷をしている。昼休みが終わったのでみんな戻ってきて仕事をしていた。


「お疲れ様。見城、諸住さん。会議室に来て貰っていい?プロジェクトの打ち合わせをする」


 そこからの下坂さんは何時もよりも三倍速で動きだす。見城さんがコピーが終わるのと同時に会議室に入り、今までの成果をまとめたものをコンペ風に披露する。

 下坂さんの持ち分、見城さんと私の持ち分も出来上がったところまでは綺麗に整備されていて、一部手直しは必要な場所もあるけど、概容は出来上がっていた。
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