晴れのち曇り ときどき溺愛
「ここまでは今までの出来上がり分で作成したものだが、この後は徐々に内容を詰めていかないといけない」

 下坂さんの言葉に見城さんは頷いていた。見城さんはどうか分からないけど、私の持ち分に関して不備は下坂さんの手で綺麗に整理が終わっていて、十分な動きをしている。私にとっては初めての大きな仕事だからか、数字や記号の羅列が一つの動きをしだすと嬉しくなる。

「さすが室長ですね。でも、このスピードアップには何かありましたか?クライアントが早期完成を依頼してきたとかですか?」

 見城さんの質問にドキッとした。さっきまで何も言ってなかったのに、急に仕事がスピードアップすると何かあったのかと思うのが普通。でも、見城さんにはこのまま何も聞かずにスルーして欲しい。今日の下坂さんはおかしいから何を口走るか分からない。

「いや。しないといけないことが出来たから、このプロジェクトは早々に終わらせる」

「新しいプロジェクトとかを請け負いましたか?」

 私の心臓が妙に変な音を立てだす。下坂さんが今日の定食屋でのことを言うと一緒にプロジェクトをするもとしてやりにくくなるだろう。

「いや。俺のプライベートだから」

「それならご勝手に。私は仕事さえスムーズに出来ればいいので。あ、後、親会社に行くならシステム課のパソコンのスペックを更新して貰えるように交渉して貰えますか?」
< 329 / 361 >

この作品をシェア

pagetop