晴れのち曇り ときどき溺愛
 見城さんは下坂さんのプライベートは全く興味がないどころか、親会社に行くかもしれないことさえも何とも思ってないみたいで、パソコンのスペックアップをお願いしている。


「それは上手く交渉してくる。それから夕方から進藤商事に諸住さんと一緒に行ってくる。その後は直帰するから後のことを頼んでいいか?」

「分かりました。後のことはお任せください。用意する書類とかあるなら手伝いますが」

「いや。今日はシステムを総入れ替えさせるために布石を打ってくる」

 会社丸ごとのシステム総入れ替えとなるとどれくらいの売り上げがあるのだろうか?確かにこのプロジェクトで開発したシステムは本格的に動きだしたら、処理能力だけでなく、色々な面で効率がよくなるはず。でも、サラッとうまくいくとは思えない。


「今度のプロジェクトで作成したシステムをカスタマイズして導入しようと思っているのですね」

「ああ。一生懸命作ったものだから、売り込まないと」

「諸住さんも室長の営業力を見てきたらいい。きっと惚れるから」

 見城さんの『惚れる』って言葉にドキッとした。見城さんの言っている意味は『素晴らしい営業手腕に惚れる』ってことだと分かっていてもドキドキしてしまう。
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