晴れのち曇り ときどき溺愛
「進藤さんと絵里菜さんのお父さんのことを下坂さんは好きなんですね」

 進藤さんのお父さんのことを嬉しそうに話すから、下坂さんは本当に慕っているのが分かる。絵里菜さんと結婚すれば本当の息子になれる。

「好きというか、あの真っ直ぐな気性には憧れる。でも、俺が一番好きなのは梨佳だよ」

 またいきなりの梨佳って名前を呼ぶ。それも運転しながらサラッと言うから性質が悪い。溺愛するとか色々言っていたけど、こんな風に不意打ちはズルい。いきなりドキッとさせるのはルール違反。

「ありがとうございます」

 感情を出さないように平静を装いながらいうと、下坂さんはクスクスと笑った。

「梨佳って難攻不落だよね。本当に俺のことを好きなのかって不安になるくらいだ。でも、素の梨佳が見れて嬉しい。もっと素の梨佳が見たいし、梨佳が俺に惚れて欲しい」

「……。」

「恋って楽しいな。なんか我慢していたのが勿体なかったって言うくらいに気持ちが晴れやかだ」

「別に恋してませんし」

「梨佳がしてなくても俺がしているからそれでいい。さ、そろそろ着く」

 進藤商事の本社ビルについて驚いた。大きな会社というのは分かっていた。でも、まさかこんなに規模が大きな会社だとは思わず、私の想像を超えていた。下坂さんは慣れているのだろう。自分の車をビルの地下にある駐車場に入れると、フッとニッコリと笑った。

「さ、仕事を頑張るか」
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