晴れのち曇り ときどき溺愛
「今は仕事中です。それに下坂さんの家のことや絵里菜さんのこともあるので私には無理です」

「家のことは少し時間がかかるけど、絵里菜のことはすぐに決着をつけるから気にしないでいい。幼馴染以上の感情はない」

「絵里菜さんは一緒にいるとまた違うって言ってました」

「梨佳って鈍感だったんだな。絵里菜の好きな男は俺じゃないよ。まあ、ヤキモチを焼くのは可愛いが」


 どうしたらいいんだろう。

 下坂さんの暴走が止まらない。

「進藤商事の総務課長はかなりの手強さでシステムの良さが分かっていても予算が合わなければ絶対に導入しないと思う」

 ビルの地下にある駐車場に車を止めるとさっきまでの暴走モードが嘘のように下坂さんは仕事モードになっていた。声も雰囲気も違っている。スイッチを切り替えたみたいだった。


「進藤さんがいてもですか?」

「何回かウチのシステムを導入してくれたけど納得しないと厳しい」

 受付で名前を言うと案内されたのは豪華な応接室だった。案内をしてきた人にソファを進められた時にちょうど進藤さんともう一人の男の人が入ってきた。

 入ってくると同時に進藤さんは下坂さんと私に満面の笑みを向ける。完璧な営業スマイルだと分かっているけど、あまりにも魅力的でドキドキしてしまった。

「よくお越しくださいました。今日は私と一緒に総務課長も一緒に話を聞かせて貰います」

「こちらこそ、急にお時間を取って頂きありがとうございます。今日は先日からお話ししておりましたシステムの件で参りました」

「それでは早速話を聞かせてください」
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