晴れのち曇り ときどき溺愛
 下坂さんと進藤さんは親友で、進藤さんの横に座る総務課長さんも二人の関係は知っているはず。それなのに淡々と話しを進めていく。

 公私混同は全くしないようだった。それどころかかなり際どいラインでの交渉が始まっていた。

「話は分かりました。このシステムを導入することによってかなり煩雑な事務が削減できるのも、それに伴い経営効率が上がるというのも分かりましたが、予算が…」

 話の通り、金額のことを持ち出してきたのは総務課長だった。

「こちらとしてもシステムにかなりの自信を持ってますのでこれ以上は難しいかと思っています。進藤商事さんですのでこの金額でとは思いますが、今日はこのシステムを紹介したかっただけですので、詳しくは又、お伺いします」

 下坂さんも引かないけど、総務課長も引くつもりはないみたいで見計らったように採算ラインを割ってくる。駆け引きというのはこういうものを言うのだろうと思った。私は営業課で自分なりに仕事をしてきたが、二人に比べると単なる子供のお遣いでしかない。見城さんの言葉を目の前にして…。私は惚れるというよりは憧れた。


 システムの話が終わり、他に仕事があるからと総務課長が応接室を出て行くと、進藤さんはフッと息を吐き、軽く下坂さんを睨んだ。

「このシステム。いいとは思うけど、かなり高いな。もう少しどうにかならないか?」

「どうするかな。これを開発するのに結構時間が掛かったし」

「お前らしいな。何の意地悪をしてる?」

「俺が居ないとこで梨佳を誘ったろ」
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