晴れのち曇り ときどき溺愛
「梨佳もこう言ってますから遠慮して貰えますか」

「分かりました。いきなりお邪魔してすみませんでした」


 下坂さんは軽く頭を下げてから座敷の奥に入っていく。障子の隙間から見えたのはスーツを着た外国だった。閉じられた障子を見て私はカウンターに置かれた料理に視線を戻す。琉生に向ける顔もなくただ、料理を見つめた。


「ビールにするか?それとも日本酒にする?」

「え?」

「グラスが空になってる。今日は俺も一緒に潰れるまで飲むから」

「嫌よ。琉生が潰れるまでって、その前に私が潰れるでしょ」

 
 スポーツので鍛えた胃を持つ琉生と潰れるまで飲むなんて、考えただけでも身震いする。でも、きっとさっきの下坂さんのことで少なからずショックを受けた私の気を晴らしてくれようとしているのは分かった。


「梨佳が潰れたら、俺の部屋に泊めてやる。その代り明日の朝、掃除をしてから帰ってくれたら、宿代はいらない」

「何それ?私に得はないでしょ」

「潰れた後で自分の部屋に送られて、部屋を俺に見られるよりいいだろ」


 自分の部屋はそんなに散らかっては居ないと思うけど、琉生が私の部屋にいるのが想像出来なかった。
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