晴れのち曇り ときどき溺愛
絵里菜さんがランチに出掛けてしまうと、見城さん。井上さん。斉藤さんも次々に営業室を出て行く。私が一人残されていた。机の引き出しを開け、見城さんから預かった下坂さんの万年筆を眺めてみる。会いたいと思う気持ちが込み上げてきた。
もしかしたら辞めるかもしれないと言っていたけど、親会社に移動になるとばかり思っていたから、急にこんなタイミングで解雇の辞令が下りるとは思わなかった。荷物も配送し、システム課のみんなにも挨拶をすることも出来ず、パソコンの中にあったシステム課の管理ファイルからも下坂さんの名前は消えている。
たった一日で会社の中から下坂さんの存在が消し去られた。
自分の気持ちに蓋をして仕事を終わらせたのは定時を少し過ぎた頃だった。見城さんは下坂さんの仕事の担当も受け取っているので忙しそうではあるけど、下坂さんに対して何一つ文句は言わず、私にも気を配ってくれていた。
「あの。私も室長の分の仕事を請け負った方がいいでしょうか?」
「その必要はないよ。室長の分担はもう終わっている。下坂室長は自分の分担部分を終らせてから解雇になっているんだ」
「意味が分からないです」
「室長は自分の仕事を終わらせてから社長の所に行っているんだよ。解雇されることを覚悟しての行動だと思う。私の分も終わりが近づいているから、諸住さんの分が出来たら、調整して今回のプロジェクトは終わる」
「自分から解雇されに行ったのですか?」
「さあ。知りたければ万年筆を届けるついでに聞いてくれば?」
もしかしたら辞めるかもしれないと言っていたけど、親会社に移動になるとばかり思っていたから、急にこんなタイミングで解雇の辞令が下りるとは思わなかった。荷物も配送し、システム課のみんなにも挨拶をすることも出来ず、パソコンの中にあったシステム課の管理ファイルからも下坂さんの名前は消えている。
たった一日で会社の中から下坂さんの存在が消し去られた。
自分の気持ちに蓋をして仕事を終わらせたのは定時を少し過ぎた頃だった。見城さんは下坂さんの仕事の担当も受け取っているので忙しそうではあるけど、下坂さんに対して何一つ文句は言わず、私にも気を配ってくれていた。
「あの。私も室長の分の仕事を請け負った方がいいでしょうか?」
「その必要はないよ。室長の分担はもう終わっている。下坂室長は自分の分担部分を終らせてから解雇になっているんだ」
「意味が分からないです」
「室長は自分の仕事を終わらせてから社長の所に行っているんだよ。解雇されることを覚悟しての行動だと思う。私の分も終わりが近づいているから、諸住さんの分が出来たら、調整して今回のプロジェクトは終わる」
「自分から解雇されに行ったのですか?」
「さあ。知りたければ万年筆を届けるついでに聞いてくれば?」