晴れのち曇り ときどき溺愛
 下坂さんは私を横抱きのまま、廊下を抜け歩き出した。その間に私の靴がポトンポトンと床に落ちて行く。その間も何度もキスを繰り返していた。そして、唇を重ねながらを降ろされたのはリビングのソファの上だった。

 大きなソファの背に押し付けられながら、また下坂さんの唇は私の唇を塞いできた。息が苦しくなるほどの甘さが私の中を走り抜ける気がした。

 自分の心臓の音が激しくて、それがとっても恥ずかしい。

「梨佳の心臓の音が凄い」

 下坂さんは言わなくていいのに、わざと耳元で囁く。その甘い吐息で私の鼓動は速くなるばかりで収まる気はしない。

「イジワルです」

「それは最初から知っているだろ」

 下坂さんは少し私の身体から離れると、真っ直ぐに私の顔を見つめてくる。綺麗な顔は色香を纏い、私を追い詰めてくる。そして、綺麗な瞳には下坂さんを潤んだ瞳で見つめる私が映っていた。

「梨佳の顔。真っ赤だね。そんな梨佳が好きだよ」

「またイジワル」

「可愛いよ。梨佳」

 下坂さんは私をまた抱きしめ、今度は触れるだけのキスをした。さっきの濃厚なオトナのキスと違う。触れるだけのまるで高校生のようなキスに痺れは感じるものの物足りなさを感じてしまった。
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