晴れのち曇り ときどき溺愛
「それって潰れるまで飲まなきゃいいってことよね」


 私の部屋とか琉生の部屋とか言っているけど、要はお互いに潰れないといいということ。でも、さすがに琉生の部屋に泊まるというのはないだろう。


「梨佳はそれでいい。俺は潰れるつもりで飲むことにした」

「何それ」

「俺が潰れたら拳を呼んでくれ。アイツには貸しがあるからきっと俺を迎えに来る」

 
 琉生が潰れたら拳が来る?あの上昇志向の高い隙のない拳に対する『貸し』なんて想像がつかない。それにきっと迎えに来るというのも気になる。

「拳に貸しって何?」

「男の秘密」

 
 これは聞かない方がいいと思った。その方がいい様な内容だと雰囲気で感じてしまった私はスルースキルを発動した。

「私、ビールにしようかな」

「俺も。あ、でも。だし巻き玉子頼んでいい?」

「いいけど珍しいね」


 唐揚げとか鉄板焼きやフライなんかを好んで食べる琉生にしては珍しい。私もだし巻き卵は大好きだから大歓迎だけど、私のことを気遣っているのだろう。私は何も考えずに色々頼んだけど、私の好きな物を選んで頼んでいるのは琉生の優しさだった。

「胃に優しいのを選んでみた」


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