晴れのち曇り ときどき溺愛
「見城がどう思っているか知らないけど、絵里菜がシステム課に来た理由はいくつかある。そのうちの一つが見城だ。父には俺と一緒に居たいと言ったらしいが、それは全くの嘘で見城と一緒に居たいが故に秘書課から来たんだ」

「絵里菜さんが見城さんのことが好きだとは思いもしませんでした」

 今まで井上さんと斉藤さんと話している絵里菜さんを見たことはあるけど、見城さんと話しているのを見たことはない。だから、絵里菜さんは下坂さんの事を本当に好きなんだと思い込んでいた。


「見城の話も絵里菜の話もいいよ。それよりも梨佳。今日は泊まるんだよな」


 泊まる??
 そんなこと何も考えてなかった。ただ、傍に居たかっただけで好きという気持ちだけでここまで走ってしまっていた。時計を見るとそろそろ日付を越えてしまう。

「明日も仕事ですし帰ります。タクシーで帰ります」

「抱きたい」

「え?」

「梨佳をもっと愛したい」

 下坂さんの表現は真っ直ぐだった。好きだから、愛しているから傍に居たいと…。もっと近づきたいと…。少し静まりだしていた心臓の音が激しくなっていく。


「私も傍に居たい」

 ぽろっと零れた言葉を下坂さんは抱き寄せてくれた。
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