晴れのち曇り ときどき溺愛
「先にシャワーを浴びてきて」

 そう言われて案内されたバスルームはとても広かった。浴槽が広くお湯を張ったら足がゆっくり伸ばせると思う。でも、私は緊張のあまりタイルの上に立ったまま、頭からシャワーを浴びていた。髪を洗い、化粧を落とす。そして、身体を洗ってからバスルームを出るとカゴの中にシャツとスウェットのズボンが用意されていた。

 通勤着で寝るのもどうかと思うし、かといってバスタオル一枚で行くほどの勇気もない。下坂さんの貸してくれた着替えは助かる。

 ただ、下坂さんの服は私の身体には大きくて、シャツはワンピース状態だし、スウェットのズボンはブカブカで足の方を何度も折り返した。なんとか髪を乾かしてからリビングに行くと、下坂さんがバスルームから出てきた私を見てニッコリと笑った。

「シャワーありがとうございました。着替えも」

「梨佳。マジで可愛いな。俺もシャワー浴びてくる。先にベッドに入ってて」

 下坂さんは私の横を通り過ぎながら、唇にチュッとキスを落としてバスルームに消えていった。シャワーを浴びて少し落ち着いたと思ったのにまた一気に顔が熱を持ち、可笑しくなりそう。今日の下坂さんは甘すぎる。

 ベッドルームは一番奥のドアの向こうにあった。そっとドアを開けると広い空間にセミシングルのベッドがあった。広い空間にぽつんと置いてある。ファミリー向けの物件だと思われるこのマンションの寝室はダブルベッドは勿論のことクイーンサイズもキングサイズも置けると思う。

 でも、そこにあったのはセミシングルのベッドだった。
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