晴れのち曇り ときどき溺愛
 寝返りを打った私は下坂さんのベッドに一人で寝ていることに気づいた。身体を起こすとサラリと身体を覆っていた羽根布団が胸の下で層を成し落ちていく。

 そして、枕元の時計は午前三時を指していた。未明のこんな時間に下坂さんはどこに行ったのだろう。下坂さんを探しに寝室を出てリビングに行くと、そこにはソファに毛布に包まって寝ている下坂さんの姿があった。

 長い足がソファからはみ出ていた。

 肌寒い季節に毛布一枚で寝ると風邪を引いてしまう。下坂さんを起こそうとして、右手の薬指に違和感を覚えた。暗くてよく見えないけど…。触った感触で指輪だと分かった。

 リビングのカーテンの隙間から差し込む月の光に手を翳すとキラキラと輝くダイヤが光を乱反射させる。ダイヤの大きさからして婚約指輪だと言われても可笑しくない。でも、右手に嵌められているとなると単なるファッションリングなのだろうか。

「下坂さん。ベッドに寝ないと風邪を引きます」

「俺はここでいいよ。梨佳。仕事まで時間があるから、もう少し寝ておいた方がいい」

「あの、指輪」

「ん…。梨佳に似合うと思って買った」

「でも、ダイヤですよ。こんな高価なもの貰えません」

 下坂さんは身体を伸ばしてスッと起き上がるとその勢いで私の身体を抱き寄せた。そして、耳朶をペロリと舐める。
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