晴れのち曇り ときどき溺愛

後日談

 あの後、下坂さんのまた鳴かされ、意識を失うように二度寝してしまい、起きたのはギリギリで頭からシャワーを浴び、もうダッシュで自分のマンションに戻り、着替えだけ済ませて会社に行くと、私が入ってきたと同時に見城さんが驚いた顔をしたのだった。

 化粧も素早くバタバタとしたからか、ジッと見られると気にはなる。


「今日は休みかと思いました。仕事は出来そうですか?」

「おはようございます。大丈夫ですが、何かおかしいですか?」

「いえ。何もないならそれでいいです。では、昨日の続きからの説明をしてから、今日の作業に取り掛かりましょう」


 見城さんの休みかと思ったという発言を聞き流し、私がパソコンを開いていると絵里菜さんが営業室に入ってきた。そして、私の顔を見るなり、ニッコリと綺麗な微笑みを浮かべた。


「おはようございます。それとおめでとうございます」

「え?」

「その左手の薬指。春くんからですよね」


 私はあまりに急いでいたので指輪を外すことを忘れていた。シャワーを浴びる時は外したけど、その後の着替えから会社までは時間がなく駆け足だった。ダイヤというのは分かっていたけど、見たのは暗い中での月明かりだけだったし、急いでいたから詳しくは何も見てなかった。

「さすがに春くんです。有名宝飾店の一点もの。それも虫除けだけに使うっていうのが今までの春くんと違って面白いです」
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