晴れのち曇り ときどき溺愛
「お互いに代理のお見合いってこともあるんだね」

「無理して笑うなよ」

「無理はしてないよ。ただ、本当にこんなこともあるんだって思っただけ」

「もう一杯。ビール飲むか?」

「うん。飲む」


 琉生はゆっくりと息を吐くと私にニッコリと笑う。琉生がこんな風に笑うのは私が何を言っても無駄なのが分かっているからだろう。運ばれて来たビールで喉を潤しながら、本当は走って追いかけ、聞いてみたかった。

『あの日の笑顔も優しさも嘘ですか?』と。


 店を出たのは最後に運ばれてきたビールが空になってからだった。私はいつも以上に飲み過ぎている。自分のお酒の量はきちんと把握しているのに今日は椅子から立ち上がるとフラっと身体が揺れた。それを支えてくれたのは琉生だった。


「大丈夫か?」

「うん」


 結局、金欠だといいながらも琉生が居酒屋の支払いは私には千円しか払わせなかった。最初は割り勘と言っていたのに、殆どが琉生が払ったことになる。


「今日は私もかなり飲んだから払うよ」

「今日は俺でいい。今度、奢って」

「なにを?」

「社食でいい」

「社食のAランチなら奢る。それでいい?」

「単品唐揚げもつけていい?」

「了解」

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