晴れのち曇り ときどき溺愛
「梨佳もかなり酔っ払いだからマンションまで送ってやる」

「ありがと。でも、自分で帰れる」

「優しい琉生くんに甘えてみたらどう?梨佳も転んで膝を擦りむいたら嫌だろう。今なら78パーセントの確率で転ぶ。だから送らせてくれる?」


 琉生が店に入って飲みだした時に言っていた言葉を思い出していた。俺の部屋に泊まるとか泊まらないとか…。それを私はすっかりと忘れていたのに、琉生は覚えていたのだろう。自分の部屋に泊まらせるつもりなんかないくせにと思いながら、頭の中には微妙な数字が浮かぶ。


「78パーセントって微妙な数字」


 クスクスと笑いながら居酒屋のある繁華街から駅に向かって歩く。その途中で躓くこと三回。その都度、瑠生に腕を掴まれる始末だった。転んではないけど、微妙な数字が頭に過る。この分だったら、きっと琉生の予想通りに私は転んでしまうだろう。


 今日はお気に入りの少しヒールの高いパンプスも揺れに一役買っている。


「琉生。送って」

「素直でよろしい」


 ニッコリと笑う琉生に釣られるように私も笑っていた。
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