晴れのち曇り ときどき溺愛
「おはよう。琉生。何があったの?」


 私に気付かず目の前を通り過ぎようとしている琉生に手を伸ばすとスーツの端を辛うじて掴まえることが出来た。琉生は私の存在に気付いてなかったのか袖を掴まれて初めて私の存在に気付いたようだった。


「梨佳。今来たのか?」

「うん。いつも通りに部屋を出てきたけどどうしたの。これ?」

「梨佳はまだ知らないの?ウチの会社が取引に失敗して朝から臨時取締役会議が行われている。倒産を回避したとしてもある程度の人員は関連会社に移動かリストラの対象らしい」


 社を挙げた取引については担当は違うものの聞いたことがある。かなり大きな取引だけどほぼ上手く行くという算段が取られていると聞いていた。それがダメになったから一気に倒産なんか可笑しすぎる。


「そんな一つの取引だけで倒産なんかないはずよ」

「俺もそう思うけど、取引が失敗したのは本当らしい。さっき、五条に会ったから何か分かったら連絡して貰うように言っといた」


 秘書課の玲奈には最新の情報が入ってくる。いつもは守秘義務と言って教えてくれないけど今回は教えてくれるだろう。これからどうなるのか心配で仕方なかった。

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