晴れのち曇り ときどき溺愛
「今から取締役会での決定事項を連絡させていただきます」

 約束の時間になり、それと同時に代表取締役の男性秘書が会議室に声を響かせた。彼が今日の進行役なのだろう。一瞬の静寂の後、緊張した空気に会議室は包まれていた。


 その言葉と同時に前に居る三人の取締役が立ち上がり頭を下げた。そして、一巡してから座ると静かに声を響かせた。話し始めたのは代表取締役だった。

「社員の皆様にこのような形で取締役会での決定事項を連絡をさせて貰うことを申し訳ないと思っています。結論から申しますと当社はある会社に吸収合併という形になります。資金援助を受ける代わりに当社はそのグループ企業の一員となることになります。大量のリストラや無理な配置換えは今のところは考えてません。もう少し決まり次第連絡をするのでよろしくお願いします」


 その直後に怒号が響いたのは無理のないことだと思う。家族を養わないといけない人もいるのだろうから、今からのことを不安に思うのも当然だった。

「今回の取引は失敗により当社の財政面での強化を図るための合併です。相手の会社はまだお知らせすることは出来ませんが、優良企業です。それだけは申し上げておきます」


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