晴れのち曇り ときどき溺愛
 私達の会社を吸収合併する会社はS&Sコーポレーション株式会社だと知ったのは新会社への移行が始まる数日前だった。


 新会社への移行が本格的に始まり次々と辞令が出ていく。紙一枚で自分の配属が決まっていく。社に残ると決めたのは私だし、後悔もしないつもりだった。


『第一営業課システム課 営業補佐 諸住梨佳』


 今までは営業だったのに合併後は『営業補佐』。その違いは…自分で自分の仕事が出来ないということ。琉生も今までとは違う部署に配置だった。でも、琉生はまだいい。


『第三営業課広域担当 営業 川添琉生』


 琉生は営業のままで私は営業補佐に降格だった。


「昨日の晩。拳から電話があった。俺と梨佳だけだったら自分の会社に来ないかって?拳の会社は業績いいし、悪くない話だと思う」

「拳が?」

「俺が吸収合併のことを言う前に知ってて電話が入った。『リストラや無理な配置転換があったら、自分の所に来いって。俺と梨佳くらいなら養える』ってさ」

 拳の申し出は嬉しかった。正直、心が傾いた。自分の性格で営業補佐で納得できるのか分からないし、新体制の始まっていない今なら退職することも可能だろう。拳の会社でなら営業が続けられる。


「琉生はどうするの?」

「俺はここに残る」
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