晴れのち曇り ときどき溺愛
 琉生らしい言葉に少し心が緩むけど、私の状況は甘くない。営業補佐となると、主として営業する人のアシスタントというのが私の仕事になる。


「私も拳のところには行けない。拳の申し出は嬉しいけど、今、辞めたら負けた気がする。私も自分の場所を取り戻せたらいいけど」

「お互いに頑張ってみよう。拳の所に行くのは何時でも出来る。第三営業部広域担当ってどんなところに行くんだろ。っていうか、俺たちの会社を吸収合併した『S&Sコーポ―レーション株式会社』ってどんな会社なんだろう。自分が勤める会社なのに何も知らない」


 S&Sコーポレーション株式会社。これが私たちに会社を吸収合併した会社の名前だった。最初の目論見通り、私達社員が知ったのはマスコミへの発表と同時だった。マスコミの取材内容を見てこれから自分が勤める会社の事を知るというのも不思議だった。


 S&Sコーポレーションはデザイン系のデジタルコンテンツを主に展開はしているものの、経営は多角化を極めている。まだ、企業としては設立してから五年しか経ってない。それなのに、私達が勤めていた会社を吸収合併出来るというのだから業績もいいのだろう。


 
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