晴れのち曇り ときどき溺愛
「見城さん。一週間でお願いします」

「そうか。じゃ、煩くしてないで早く仕事をしろ」

「はーい。頑張りまーす。でも、梨佳ちゃんに仕事を教えないと。こういうのはすぐ上の先輩である俺の仕事だよね」

 さっきからサラッと何事もないように私を『梨佳ちゃん』と呼ぶ斉藤さんに驚いたけど、斉藤さんからは人の良さと優しさが滲み出ていた。


「諸住さんは営業補佐だから俺たちの仕事とは根本的に違う。第一営業課システム課となっているが、自分たちで開発したシステムを自分たちで売り込みに行くスタイルは前と一緒だ。諸住さんはシステムも組めないなら開発も出来ないだろう」


 営業課ならは販売するものが変わるだけだと思っていたけど簡単ではない。システム開発なんかしたこともない私は『補佐』なのが当たり前だった。


 合併してすぐに現実の洗礼だった。


「梨佳ちゃんは先輩の俺がキチンと教えるから大丈夫だよ。すぐに補佐から普通の営業になれるって」


 斉藤さんをチラッと見つめ、見城さんは溜め息を零した。


「斉藤。諸住さんは井上さんが教えることになる。井上さんなら室長の気持ちも汲んで、会社の状況も考えてくれるから諸住さんにはいいだろう」

「井上さんは教えるのが上手いから仕方ないけど俺が教えたかった。で、井上さんは?」

「まだ来てない。室長も来てない」

 
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