晴れのち曇り ときどき溺愛
 コピー機から吐き出された冊子は印刷会社に頼んだ物に見えるほどのクオリティで鮮明な出来上がりだった。倒産しかかった私の会社はデザイン系だったのに持っているコピー機の性能は普通レベル。『これがあればもっと仕事が捗ったかもしれない』と本気で思った。


 コピー機によって作られるのはプレゼンテーション用の資料で数字と表と難しい専門用語が並んでいる。

 ここでのコピーは客先に持って行くための資料なので営業補佐としては大事な仕事だと思う。でも、営業課として客先に向かい充実した一日を過ごしていたから、ずっとこのまま営業室から出られないと思うと気が滅入りそうだった。


 出来上がった資料は同じようなデザインを扱う企業なのにこんなにも違うものかと思った。資料のデザインも前衛的でインパクトが強く、目を引くものだったし、そのデザインに添えられた文章も説得力がある。内容はかなり緻密で正確だった。


 営業課は『商品を売る』のが仕事。そして、『仕事を取って』来るのも仕事。


 私は『商品知識』も薄ければ、琉生のようにが仕事を取ってくるほどの実力もない中途半端な存在だった。だから、システム課の『営業補佐』なのだろう。

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