晴れのち曇り ときどき溺愛
「分かりました。準備します」

「室長俺も手伝ってきます。湯呑とかカップとかも教えてきます」


 そう言ってくれたのは斉藤さんだった。下坂さんが何も応える前から自分の席から早々に立ち上がろうとしている。私も勝手が分からないので教えてくれたら助かる。


「そうだな。斉藤に習ってくれ」

「はーい。じゃ、淹れてきまーす」


 斉藤さんは自分の席から動きながら手招きした。


「教えるから給湯室にきてくれる?」

「はい。お願いします」

 給湯室は応接室のドアの奥にあり、そこには小さなキッチンもある。斉藤さんはやかんでお湯を沸かしながら、手際よくコーヒーメーカーをセットし、戸棚からカップを出していく。

「下坂室長は朝は濃いめのお茶。昼以降はブラックコーヒー。井上さんは朝は薄めのお茶だけど、昼以降は濃いめのお茶。見城さんはその時の気分。普段はブラックでいい。俺は砂糖とミルクがいっぱい入ったものが好き。梨佳ちゃんはどんなのが好き?」

「私もミルク入りのコーヒーが好きです」


 濃い茶に、薄茶にブラックコーヒーに甘いミルクコーヒー。実際に好みの味加減は分からないけど、とりあえず斉藤さんに教えて貰いながら淹れて行く。人にお茶を淹れるのなんてしばらくぶりで自信はなかった。
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