晴れのち曇り ときどき溺愛
 斉藤さんは器用な人でコーヒーメーカーと急須を自在に扱い、皆の飲み物を準備していく。お盆に乗せたカップには個人の好みに合わせて飲み物が入れられていた。

「これでいいでしょうか」

「うん。今日は梨佳ちゃんにお願いしたけど、ウチの課は手が空いた人がお茶を淹れることになっているんだ。室長でもお茶を準備するよ。でも、今日はキッと美味しいと思う」


 意外だった。室長は雑務は全部部下にさせるのかと思っていたから驚く。前の課の課長がお茶を入れるのを見たことなんかない。営業補佐だからお茶くみを頼まれたと思っていた。


「なんでですか?」

「女の子に淹れて貰うと格段に美味しいと思うんだよね」

「そうでしょうか?」

「だって、可愛い女の子が俺のためお茶を入れてくれるんだよ。仕事のモチベーションが上がる。さ、営業室に戻ろう。飲み物配ったら仕事しよ」

「システム開発の仕事って難しいですか?」

「うーん。難しいけど、俺は面白いから好き」

「凄いですね」

「そのうち梨佳ちゃんも仕事が好きになるって」

「だといいのですが」

「大丈夫。さ、戻ろうか」


 飲み物を準備して営業室に戻ると、私の机の上には書類がたくさん置かれていた。
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