晴れのち曇り ときどき溺愛
「梨佳ちゃん。さっき教えたとおりにカップを個別に配ってくれる?書類やパソコンには気を付けて零さないようにね」

「はい」


 机の上に教えて貰った通り飲み物を置いていく。最後に斉藤さんのミルクコーヒーを置いたら、ホッとした。どれだけ緊張しているのだろう。お盆を給湯室に片付けて机に座った私に声を掛けたのは下坂さんだった。


「机の上になる書類のデータをパソコンの中にある表に打ち込んで貰っていい?打ち込むファイルの場所はメモに書いている。ログインパスワードはこの課で共有だから誰にも教えないように。それと明日にでも諸住さんの歓迎会をしたいと思うけど、明日は大丈夫?」

 矢継ぎ早に言われ、ドキドキしてしまう。


「明日は大丈夫ですが、歓迎会など申し訳なくて」

「では明日にするから、予定を入れないようにしていて」

「はい」

「じゃ、仕事を続けて」


 下坂さんに頼まれた仕事をしていて、終わったくらいに井上さんが仕事を頼んでくる。一生懸命仕事をしていると何も考える時間がなかった。


 手が空かないようにと気を使ってくれているのに気付いたのは昼休みを過ぎてからだった。パソコンで割と表計算や文書作成の仕事をしていると、井上さんの手がとても速く動いているのに気付いた。きっと私がするよりも自分でした方が早いだろう。

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