晴れのち曇り ときどき溺愛
　見城さんが下坂さんと私と一緒に食事に行ってくれると嬉しい。下坂さんと二人で食事をすると想像するだけでキャパオーバーだった。会社の合併で新しい部署に配属されただけでも精神的に厳しいのに、その上、お見合いをした上に好意を持った人と二人なんて無理。

　
　玲奈の代わりで行ったお見合いがこんな形で返ってくるとは思わなかった。

　あの日のことはまだ私の中で消えない。下坂さんは何もなかったように振る舞っている。でも、私はまだどうしていいか分からない。


　居酒屋で貰った名刺に連絡をしなかったのは私なのに自分の気持ちが揺れた。


「俺も行きたい。三人よりも俺を入れての四人の方が楽しくない？梨佳ちゃんも四人がいいよね」


　そう言ったのは斉藤さんだった。斉藤さんはバタバタと自分の机の上に置かれた書類を隅に重ね、椅子から立ち上がった。行く気満々という様子の斉藤さんを瞬殺で切り去ったのは井上さんだった。


「斉藤は昼から私と一緒に得意先だろ。私が得意先の近くの定食屋に連れて行ってやる。とっても美味しい店だし、近くの方が慌てずに済むからいい」

< 68 / 361 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop