晴れのち曇り ときどき溺愛
 玲奈の父親は有名な弁護士で大企業の顧問もしている。玲奈の母親は大企業の創業一族の令嬢で、今は専業主婦。思いやりのある夫に嫁いだことで母親にとっては仕事をする玲奈が理解できず、玲奈の幸せは自分と同じであると思い込んでいるらしい。


 娘に幸せになって欲しいと思う気持ちは分かるけど、お見合いまでセッティングされるというのも生粋のお嬢様の考えだと思った。でも、この話の流れを読んだ私は即答した。

 玲奈の為でも無理なものは無理。


「ゴメン。無理」

「まだ何も言ってないのに」

「この話の流れで次に出て来る言葉くらいは読める。私じゃ役不足よ」

「お見合いの日。常務と一緒にニューヨークに出張なの。でも、こちらの都合で日にちを変えると相手に私がお見合いする意思があると思われる。それだけは困る。だから、私の代わりにお見合いに行って断ってきて欲しいの」


「無理」

「梨佳にしか頼めない」

「無理」

「お願い」

 
 トレーに置かれたサンドイッチが幾分か新鮮さを失い始めたように感じた頃、私は玲奈の顔を見ながら溜め息を零すことになった。私も仕事を大事に思っている。それは玲奈も同じこと。でも、だからと言って『お見合いの代理』というのも困る。

 必死に頼んでくる玲奈を見ながら私は折れた。


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