晴れのち曇り ときどき溺愛
 部屋を間違えてしまったと思った。


 玄関でインターホンも鳴らしたし玲奈の声も聞こえた。だから、間違えるはずはないのに目の前には玲奈ではなく常務がいる。それも思いっきり普段着の常務がいる。寛いでいたというのがアリアリだった。


「私、間違えました?」

「間違ってないよ。驚かせてゴメン。玲奈が手を放せないから俺が出ただけ。さ、玲奈も待っているから入って」


 常務はニッコリと笑うと、驚く私を部屋に入れてくれる。見上げるとニコニコと笑ってて、私はそのまま頭を下げてから靴を脱いだのだった。


「来たことあるよね。スリッパは分かる?」

「はい」


 焦る私を余所に常務は慣れた風に部屋の中に入っていく。真っ白な空間にモダンな黒の革張りのソファーがある部屋はモノトーンで纏められていてシンプルな綺麗さがある。玲奈のいつものイメージとは違うから彼と一緒に住んでいると思っていた。

 
 玲奈の彼が常務だとは思わなかった。


 リビングに入ると玲奈はキッチンにいて、チーズとハムの乗ったプレートを持ち、片手にはワインを持っていて、常務はリビングに入るとサッと玲奈に近付き、手からワインを取ると、それをテーブルの上に置いた。優雅な仕草は育ちの良さを思わせた。
< 81 / 361 >

この作品をシェア

pagetop