魅惑への助走
 「いやいや。作品へのアドバイスですよ、アドバイス」


 片桐は苦笑いを浮かべながら、松平社長に答えた。


 「……にしては度が過ぎるわね。この子には刺激が強すぎるんじゃないかしら?」


 「いい作品を書いてもらうためには、より綿密な指導も必要ですからね。百聞は一見にしかず」


 片桐は私への過剰なまでのボディタッチ、セクハラを正当化しようとする。


 「そう……。アドバイスなら大歓迎ね。上の社長も片桐くんの貢献には期待しているから、これからもよろしくお願いしたいわ」


 「!」


 上の社長、すなわちSWEET LOVEの親会社にあたる大手アダルトビデオメーカーの社長。


 その旨に言及した途端、片桐はばつ悪そうな表情を浮かべた。


 後から知ったのだけど、片桐は共演女優やメーカーの女性スタッフに、自らの立場を利用して関係を迫ることが多々あって。


 メーカー内では問題になったこともあり、今後トラブルを起こした場合は今後の起用に関して少々考えさせていただく……といったような牽制、イエローカードを提示された状態だったらしい。
< 112 / 679 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop