魅惑への助走
 確か恋人はいないと聞いていたその男に、主人公は偶然を装いメールをして。


 せっかくだから今から会おうかって話になり、待ち合わせて食事をして。


 ワインの勢いもあって余計に盛り上がり、そのままホテルに……。


 「ありがちな展開だけどね」


 ワードに文章を保存し終えたのを確認し、私は苦笑した。


 本当はもっと凝った話にしたい。


 だけど収録時間と予算の関係で、込み入った展開に持ち込むのは不可能。


 実際に撮影したい場所にロケに出向きたいけれど、それもなかなか。


 ドラマのように一時間とか、じっくり楽しめる官能作品にしてみたい。


 「……SWEET LOVE専属の単体男優が生まれれば、そんな計画も実現可能になるのだけど」


 松平社長が話してた。


 普通の男優に、長時間の収録やロケを伴う撮影を依頼することは困難。


 その点自社で専属男優を用意できれば、こちらの思惑通りの撮影が可能になる。


 だけど未だ見つかっていない。


 早く見つけなければ……と社長は焦っているけれど、御眼鏡に適うような素材を発掘できていない。
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