魅惑への助走
 「武田さん?」


 私の意図が分からないようで、上杉くんは私を見つめる。


 その間も花火は打ち上げられ続けている。


 「私じゃだめ?」


 「えっ」


 「上杉くんの支えになりたいの」


 「それは、」


 「上杉くんが好きなの」


 沈黙が怖くて、矢継ぎ早に想いをぶつけた。


 「頑張っている上杉くんの、後押しをしたいの」


 「あ、ありがとう武田さん」


 ……思い切って私のほうから切り出してみたのに、お礼をされただけでそれ以上話が続かない。


 「それだけ?」


 「ほ、ほんと嬉しいよ。いつもありがとう」


 感謝を強要されたと勘違いしたのか、上杉くんは重ねて礼を述べてきた。


 「違う」


 私は上杉くんの首に、両腕を回した。


 「私も上杉くんを支えるから、上杉くんも私を支えて」


 そのまま私のほうから身を寄せた。


 「お互い支え合っていきたい」


 回した腕に力を込めても、上杉くんは私を拒まなかった。


 戸惑いつつも、私に好意を持ってはくれていると思う。


 それを確かめるために顔を上げて……私のほうから唇に触れてみた。
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