魅惑への助走
 それから金魚。


 飼育セットを空けて、水槽を整えた。


 水の汲み置きはないので、中和剤を入れて塩素を抜く。


 水温を安定させたのを確認して、金魚を水槽へ。


 そしてエアーポンプのコンセントに差し込み、水中に空気を送り込む。


 次に買ってきたお惣菜をパックから取り出し、お皿に入れて並べていたところで上杉くんがバスルームから出てきた。


 「あ、金魚、水槽に入れてくれたんだ」


 まだ環境変化に戸惑い、水草の陰でじっとしている金魚を確認していた。


 「ビールはとりあえず、全て冷蔵庫に入れておいたから」


 「了解。スーパーからここに来るまでの間、暑さでぬるくなったよね」


 「……私もシャワーしてくるから、その間テレビでも見ていて」


 スイッチを入れると、間違ってアダルト作品が表示されたらどうしようかと心配だった(ハードディスクに保存されている)けど。


 誤操作はなく、表示されたのはスポーツ中継だった。
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