魅惑への助走
 女が男を求めるのには、いくつか理由がある。


 学生時代は容姿や明るいキャラだとか、体育会系の部で活躍しているなどといった、華々しいキャラクターが重視される。


 彼氏は一種のアクセサリー、上等な持ち物を周囲に見せびらかして優越感に浸りたいという気持ちと背中合わせ。


 だけど大人になってしばらくすると。


 学歴とか出世の見込みとか財力、自分が幸せになるために必要とされるアイテムを、いつしか相手に求めているのに気づく。


 ……私が上杉くんを必要とするのは?


 「だめ」


 「ふふ……。明美の肌って、敏感なんだね」


 どこに触れると私が敏感に反応するか、すでに気づき始めている。


 ……体の相性が最高。


 改めてそれを感じる。


 どんなに自信満々で回数こなした男でも、私をここまで夢中にさせた人はいなかった。


 男なんて誰でも同じだと思い込んでいたけれど、心の底から望んだ人に抱かれることはこんなに幸せなことだって、初めて気づかされた。
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