魅惑への助走
 作品紹介文や作中シーンの画像、パッケージ画像を掲載したチラシを、店長に示す。


 「えっ、これがエロビデオのパッケージなの?」


 店長が驚くのも無理はないかも。


 どぎつい格好をしたAV女優が肉体を誇示し、扇情的なタイトルと紹介文に彩られたパッケージが当たり前の、男性向けAV。


 しかしながら我らがSWEET LOVEの最新作のパッケージは。


 ぱっと見音楽DVDと見間違うほど、シンプルな外装。


 表面中央に、女優の頬にキスをするイケメン男優の画像があるのみ。


 タイトルも「秋色の風と恋」。


 「音楽CDかDVDみたいじゃない」


 店長はそれがAVソフトだとは、なかなか信じてくれなかった。


 その後松平社長は、SWEET LOVEのコンセプトや今後の展開計画などを熱く語り出したのだけど、店長は、


 「だけど、売れるの? それ」


 話を端折る。


 「だってさ、女の人がエロビデオ買える? 夫や家族に見つかったら恥ずかしくて、無理じゃない? 見つかった時の恥ずかしさは、男の比じゃないでしょ」
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