魅惑への助走
***


 「ちょっと。飲むペース速すぎじゃない?」


 その日の夜。


 上杉くんとビアガーデンに来ていた。


 昼間の件、非常に頭に来て。


 SWEET LOVEの人たちとやけ酒を食らいたかったのだけど、予定が合わず。


 代わりに上杉くんを呼び出したら、飛んで会いに来てくれた。


 今日は遅くなるから会えないと伝えてあったので、予想外に私と会えて嬉しいって喜んでくれた。


 「明美、このままじゃ急性アルコール中毒で、救急車で運ばれるよ」


 「そしたら介抱して」


 「明美」


 「だってやってられないんだもん! もうとことん飲んで、馬鹿になりたい」


 「仕事で何か、嫌なことあったの?」


 察しのいい上杉くんは、当然見抜く。


 「俺に話せることだったら、話してみてよ。できる限り相談に乗るから」


 AVに関することは言えない。


 ただ……。


 「世の中、不条理なんだよね。女ってだけで不当に差別されたり、見下されたり、レッテル貼られたり」
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