魅惑への助走
 「どんなに頑張っても、仕事内容よりも外見ばかり注目され、セクハラまがいの言動を受ける、ってこと?」


 「……」


 「それは仕方ない面もあるんじゃないかな。明美は綺麗だし」


 あっさりそう言われても、嬉しいような、何の解決にもならないような。


 「容姿に恵まれず、悔しい思いをしている子のほうが多いのに。贅沢な悩みだね」


 上杉くんは苦笑した。


 「そういえば大学の同期の女の子でも、そんな話してた子いたな。その子、すごい巨乳でさ。胸囲一メートル越えてたの。どこに行ってもそこばっかり注目されて、彼女の本質的な面を見てくれないって、嘆いていたけど」


 「へえ。その子、何カップ?」


 胸囲はものすごい数値でも、ただの肥満の可能性もあるので、念のため確認。


 「さ、さあ。でも太っているわけじゃなかったから、EとかFとかじゃないの?」


 上杉くんは恥ずかしそうに答えた。


 「巨乳って、実社会では好奇のまなざしで見られることが多いから居心地が悪いだろうけど、AVだったら強力な武器になるんだけどね」


 うっかりAVを、話題に出してしまった。
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